新作映画『彼女がその名を知らない鳥たち』 感想 レビュー


 予告動画がもうなんか、どストライクだったんですよね〜。常識を打ち破るような価値観、みたいなのが本当に好きで。究極の愛とは?っていうテーマがそそりますよね。


 10月28日から公開している『彼女がその名を知らない鳥たち』。って題名長いわ!でもこの題名もなんかミステリアスで良い!
 監督も自分的に推しです!
 しかっし劇場が少ない!あの新宿でも一個しかやってないってなんなんだろうまじで、、、


 というわけで時間を逃し逃しこの時期になってしまいました。学祭シーズンのこの時期に薄気味悪いこの映画を見る気分!それもまあ良しということなんでしょうか笑


 というわけで早速見に行ってきましたよ!




作品紹介

あらすじ




蒼井優&阿部サダヲW主演・共感度0%あなたの恋愛観を変える/映画『彼女がその名を知らない鳥たち』予告編

15歳年上の男・陣治と暮らしながらも、8年前に別れた男・黒崎のことが忘れられずにいる女・十和子。不潔で下品な陣治に嫌悪感を抱きながらも、彼の少ない稼ぎに頼って働きもせずに怠惰な毎日を過ごしていた。ある日、十和子が出会ったのは、どこか黒崎の面影がある妻子持ちの男・水島。彼との情事に溺れる十和子は、刑事から黒崎が行方不明だと告げられる。どれほど罵倒されても「十和子のためだったら何でもできる」と言い続ける陣治が執拗に自分を付け回していることを知った彼女は、黒崎の失踪に陣治が関わっていると疑い、水島にも危険が及ぶのではないかと怯えはじめる――。(公式より)




キャスト、スタッフ

・監督:白石和彌
・原作:沼田まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち」(幻冬舎文庫)


・<嫌な女>北原十和子:蒼井優
・<下劣な男>佐野陣治:阿部サダヲ
・<ゲスな男>水島真:松坂桃李
・<クズすぎる男>黒崎俊一:竹野内豊


 とまあざっくりと。


 白石和彌監督と言えば来年も公開作品が二作もう決まっています。劇場でもバッチリ予告編やってました笑。いかつい予告編を二個もやられたら見る前からめいっちゃいましたね、、、


✔️一個目が『サニー/32』



北原里英、初主演映画で殴られ!縛られ!舐められる!の体当たり演技/映画『サニー32』特報


 中学校教師・藤井赤理は、24歳の誕生日に突然誘拐されてしまう。それぞれ柏原と同じ名を名乗る誘拐犯2人は、「犯罪史上最も可愛い殺人犯」と神格化される少女“サニー”の信奉者で、赤理をサニーと呼び、あばら家に監禁する。

 というあらすじだけで何やら気持ち悪くなってしまいそうな話。でもだからこそ見たくなっちゃうわけでもあって。『凶悪』コンビのピエール瀧とリリーフランキーの再共演と、北原里英が映画初主演というところもあって、注目されているところでしょうか。



✔️そして二個目が個人的にも大注目の『孤狼の血』!!!



映画『孤狼の血』特報映像


 昭和63年、広島。所轄署の捜査二課に配属された新人の日岡は、ヤクザとの癒着を噂される刑事・大上のもとで、暴力団系列の金融会社社員が失踪した事件の捜査を担当することになった。飢えた狼のごとく強引に違法行為を繰り返す大上のやり方に戸惑いながらも、日岡は仁義なき極道の男たちに挑んでいく。やがて失踪事件をきっかけに暴力団同士の抗争が勃発。衝突を食い止めるため、大上が思いも寄らない大胆な秘策を打ち出すが……。

正義とは何か、信じられるのは誰か。日岡は本当の試練に立ち向かっていく―—。(原作特設サイト)

 いいっすねえ〜。かっこいいおじさまたちってマジで大好きなんですよね〜。キャストもそんな渋いおじさまがたくさん出てくる予感。期待大です!!!
 今回の『かのとり』にも出演している松坂桃李さんと竹野内豊さんのクズコンビも続投していますね!


 期せずして10代最後の映画となってしまった今作、どんな気味の悪い話になっているんでしょう!?
 てな訳でこっからは感想です!



















 共感度0%、不快度100%は確か。
 ゲスな男と女の「究極の愛」とはなんなのかを見届けて!

  

共感度0%、不快度100%

 この触れ込み通り、十和子陣治とその他登場人物についての共感は不可能。そしてその全ての人間の言動が不快
 陣治の容貌からしてこいつが一番やばいかと思ったら、一番やばいのは個人的には十和子かな〜。


 最初のカットからもう人間のクズさが出ているというか。めっちゃクレーマーなんですよね。時計が壊れたとか言って百貨店に文句を言ってるんだけど、それがこの一回こっきりじゃないらしく。何度もなんども文句たれて、その度に無理難題を言っているという。百貨店だけじゃなくて、DVDショップにも連続して文句を言いに外出している。しかも「時間を返して」的な、「いやなんて言って欲しいんだよ!」っていう文句のつけ方だからお店も謝ることしかできない。。
 知り合っても友達には絶対になりたくないな、と(汗)


 そんな十和子だけど、陣治といる時の顔つきと、黒崎(昔の恋人)とか水島(今の不倫相手)とかといる時の顔つきが全く違う。
 普段は少女のような、というか駄々っ子のような顔つきで、自分では何にもしない。とにかくいつも他人に何かを期待しているんです。養われて大事にされて当然みたいな。だからお店にも自分が思ったことをそのまま文句言えちゃう。
 なんだけど、イケメンと会う時にはちゃんと化粧もして、女の顔になっている。その変貌ぶりがまた怖いなあ、と。でもその言動が、普段の時も女使用の時も全部薄っぺらいんですけどね。


 それから陣治は別に悪いやつじゃないけどでも不潔というか汚らしい感じ。そんな奴に言い寄られても十和子もそりゃめんどくさがるでしょ、と。それにしてもなんでこんなに阿部サダヲは肌を黒くしたんだろう、、、予告とか見たらわかるけど、浅黒いんですよね。かっこいい黒さでは全くなくて。よくここまで汚したなあと見ながら思っていしまいました笑。


 そんな陣治を煙たがる十和子も男に捨てられそうになった時には陣治とおんなじ言動になっているのが面白くもあり皮肉でもあり。「会いたいの」という十和子と「心配なんや」と十和子について回る陣治が被って見える。結局この二人は根本のところでは一緒なんじゃないかと思わされました。


 というこの二人がなぜか同居していて、十和子は陣治の給料に頼って毎日生活しているという。前半はほぼこの二人が中心になって、その自堕落な十和子と暴走気味な陣治の気味わるさにうげえ〜って感じです。

 それから、不倫するゲス男を演じるのは松坂桃李さん。水島という百貨店勤務の爽やかサラリーマンを演じています。
 こいつもまた薄っぺらい男で。ベットシーンの「あーって言って」みたいなプレイがなんだろう、生々しかったです。覗き見してるみたいなんですよね他人のプレイを。。。
 でも結局自分は孤独。その穴を埋めようと女に手を出しているという。
 そういう設定って結構あるような気がするけど、それでもその穴を埋めることができた男とか女って見たことないよ。。。


 しかも監督もこれまでの作品から想像できる通り、撮り方に一癖も二癖もある。序盤に出てくる、貯金箱をゆっくり回転させるカット。怖い笑。
 タメを作りすぎてもうホラーみたいだし、、、


究極の愛、とは

 予告編でテーマになっているのが「究極の愛」。なんかよくありがちなテーマだなあと思いつつ、この監督にこの原作だし、一筋縄ではいかない感じもあり、今回見て見たくなったところもありました。
 究極の愛ってまさか自己犠牲とかそんなんじゃないだろうな、と。
 恐る恐る見ていたわけですよ。


 と、ここで気になるのが、竹野内豊さん演じる十和子の昔の男、黒崎
 ちょうど真ん中くらいかな?失踪していたということがわかります。ここから話がちょっとずつ動いて行くわけです。
 失踪って一体何があったのか。黒崎は今どうしているのか。そして誰が、、、
 となって、その見当はもうだいたいついてるわけです。まああいつこうしたんだろう、と。十和子も刑事さんもそれをみんな疑ってるわけですね。
 そしてその手が今度は今度は水島に。ちょっとずつ何かが変になって行く。不気味でしたね。


 が!しかし!
 
 それだけではもちろん終わらないのでご安心を!!
 この作品は結局ラブストーリーでもありながら、ほとんどの割合をミステリーが占めていると言っていいのではないでしょうか。つまり、隠された真相を探る話だと。
 相当身構えて、気に触ることがあればもうめちゃくちゃに書いてやろうという準備をしていた身からすると、そうきたか、と(こんな見方をされる映画がかわいそう)。正直ビックリしました。
 これまでの陣治の気持ち悪いまでの十和子に対する執着は、気持ちいいまでのミスリードだったのだと。しかもそれから思い返してみると、ちゃんとあるんですよ伏線が。真相がわかってから思い返すと、それまでとは違った意味での伏線になっているという。ダイヤのピアスとか。陣治が血のついた服を洗ってるところとか。。。


 そしてこの「究極の愛」っていうのが、一体誰に向けられた言葉なのか、というところも考えてしまいました。
 陣治についてはそこまで考えなくてもわかる。
 あの状況で、あの行動をするのはそこまで不自然ではないかな〜と思いました。まあただ最後らへんのセリフは、良かったかどうかは別としても意外性はあったかもしれないけれど。(個人的にはありだと思いますちょっと怖いけど)


 でも十和子が〇〇に向ける「究極の愛」という考え方もできるだろう、と。
 もうこれ以上はネタバレになってしまうけれど、十和子にとって陣治に対してできることっていうのが最後、なんなのか。それからの話は描かれていないけど、でも最後のセリフたった一つのセリフが、十和子のこれまでもこれからをも物語る、シンプルでそして「究極の」言葉なのだろう、と。
 十和子がラストシーンで選んだ選択肢を、これからも選び続けて行くことが陣治に対しての「究極の愛」なのではないか、とそう思いました。


 でもそれって相当虚しいだろうな〜と。というか、生まれてきた子供がちょっとかわいそう。どうしたってまともには育たないだろうな。


あなたの恋愛観を変える

 「あなたの恋愛観を変える」というのが予告編で最後に出てくるキャッチなのですけれども。見終わって私の「恋愛観を変え」たか、というところですよね。
 ん〜どうなんだろ。笑
 そもそも恋愛なのか、というところはありますね。
 なんだろう、しっくりこないわけではないし、矛盾点もないんだけど、恋愛観を変えたかっていうと。う〜ん。なんだろう。何が悪いわけでもないけれど。


 さっきも言ったけれど、これをラブストーリーとしてみるのは個人的には無理があったのかもしれないです。それよりも、十和子と陣治の関係に隠された真相を探し、騙されるミステリーとしての見方の方が自分としてはしっくりきたというか。


 『容疑者Xの献身』という映画ありましたよね。ドラマ『ガリレオ』シリーズの劇場版で、東野圭吾さんの直木賞受賞作品を福山雅治さんが主演でやってた。
 今回、どうしてもそれと似たようなものを感じたというか。実は見る前からそれと比較しているような先入観は持っていたんですけれども。真相が明らかになって、その中心には「究極の愛」がある、という見方の方が受け入れやすかった。


 ただ、ミステリーとしてはミスリードがなかなか上手だったかな、と。あらすじ読んだだけでなんとなくラストが予想できてしまうようあらすじではあったので、そこは余計にひっくり返されたというか。
 そこに関してはすごく面白く見られました。騙されることは間違いないと思います!


最後に


 最後に。題名の『彼女がその名を知らない鳥たち』について。
 よく理解できなかった映画については題名から考えることにしているんですけど、この映画は逆に題名の意味がわからない。なんたって鳥全然出てこないし笑
 最後だけなんですよね〜。
 この最後の鳥が陣治のメタファーなのか、というところはわかったわけですけど。
 「その名を知らない」。ここがなんなのか。
 まあ一つ考えられることとしては、「鳥」というのが「愛」のことなのかもしれない、ということ。この愛に、なんという名前をつけたらいいのか、確かに僕は知らない。


 阿部サダヲさんが、「皆さんに見終わった後にどういう気持ちになるのかお聞きしたい」みたいなことをテレビで言ってたんですけど、その通りでして。嫌な気持ちになるのか、何かが晴れたような気持ちになるのかは人それぞれ、と言ったところなんでしょうか。ぜひ見た後に感想を言い合って欲しいですね。