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【ネタバレなし感想】 『悪と仮面のルール』ーー曇り空に射す一筋の光

こんにちは!


今回レビューするのは、『悪と仮面のルール』です!!!!



1月13日公開の本作、ぶっちゃけそこまで注目されていないようでして…。主演が玉木宏というのがどうなんでしょう、ヒットする要因になるのかならないのか、もっと言えば玉木宏ってまだ人気あるん?ていうところが正直不安なのですが、僕は!僕は割と普通よりも熱量多めで期待しておりました!


原作の中村文則さんが好きな私!原作もちろん読んできました。この作品でも相変わらず中村文則ワールド全開です。




中村文則さんについて。


そう言われても「誰ですか中村文則?」てお方もいらっしゃるかもしれませんね。ちょっとご説明を。


小説家界ではなかなか人気のあるお方で、テレビなどにもたまにでてらっしゃいます。なんと小説家にして公式ホームページもあるほど。


公式ホームページはこちら↓


現在41歳の小説家、中村文則さん。2002年に『銃』でデビューしたのちその3年後には『土の中の子供』で芥川賞を受賞。


2012年、『掏摸(スリ)』の英訳版『THE THIEF』が、アメリカアマゾンで、2012年3月のベスト10小説、アメリカの新聞 「ウォール・ストリート・ジャーナル」で、2012年のベスト10小説、にそれぞれ選ばれる。これがやはり代表作なのでしょうかね。僕も『掏摸』からこの作家さんに入りました。


その作風は何と言ってもダークでシリアスな色調。内面的に語りかけるような深く沈んだ暗い雰囲気と、それに呼応するかのように垣間見える光。「どうしたらここまで闇に落ちた文章を書くことができるんだ!?」というようなテーマや登場人物のによる語りが印象的です。まあ好み分かれるところでしょうけども。


最新刊は『R帝国』ですね。こちらは完全に国民を支配した独裁国家R帝国が舞台の近未来を描いたちょっとしたSFと言えるような物語です。

R帝国
R帝国
中央公論新社


そしてその兄弟作とも言えるのが『教団X』。

教団X (集英社文庫)
教団X (集英社文庫)
集英社
2017-06-22

こいつがまたすごい!!描いているのは、まあ単純に言えば二つの新興宗教教団の争いなんですが、その内側にあるのは「共に生きよう」という普遍的なテーマであり、確実に現代の政治や社会についての風刺、あるいは作家・中村文則としての主張が強烈に刻まれていると言って良いでしょう。読んだ直後には僕も卒倒しそうになりました。これだけメッセージ性が強い小説は初めてだ、と。


いろんなブログで書いていると思いますが「共に生きよう」というセリフを僕は文章の中でよく使います。『DEVILMAN crybaby」ではもろにその言葉がテーマになっていました。それから最近だと『新感染』がそれでしょう。この「共に生きよう」というのは『教団X』で登場するセリフであり、本作と『R帝国』におけるテーマでもあると思っています。


この『教団X』は、映画化もされておらず(おそらくできない…)なんら受賞作でもない上に中村文則作品の中で最長編であるにもかかわらず、重版を重ね、大ヒットを飛ばしています。




という(書きすぎた)、現在大注目の作家中村文則の過去作の実写映画化ともあって、個人的に大注目であったのです!!


ということで作品情報についで感想いってみましょう!



作品情報


あらすじ

11歳の久喜文宏は、この世に災いをなす絶対的な悪=“邪”になるために創られたと父から告げられる。やがて、父が自分を完全な“邪”にするために、初恋の女性・香織に危害を加えようと企てていることを知り、父を殺害して失踪する。十数年後、文宏は顔を変え、“新谷弘一”という別人の仮面をつけ、香織を守るために殺人を繰り返していた。そして、文宏の過去を知る異母兄の幹彦や日本転覆を企むテロ組織が香織を狙い始めたと知った文宏は、ついに自身の背負わされた運命に立ち向かうことを決意するが――。(公式ホームページ)



スタッフ


監督 中村哲平


脚本 黒岩勉


原作 中村文則



監督の中村哲平さんて方なんですけど、初めましてなお名前だったのでちょっと調べてみたら、なんだか映画畑の人ってわけじゃなさそうですね。


有名どころでは、福山雅治が出てるアサヒスーパードライのCMとか、UVERworldのドキュメンタリー映画を作って発売初週ランキング第1位(これは『THIS IS IT 』以来だとか!)を記録したり、マイケルベイとかジョンウーとかとCMを作ったりと(!)、かなりアクロバティックにいろんな分野でしかもインターナショナルにご活躍のよう。ちゃんとした日本商業映画は今回が初なのかな?というお方。日本にもこんな方いらっしゃるんですね!



キャスト


久喜文宏 玉木宏


久喜香織 新木優子


伊藤亮裕 吉沢亮


久喜幹彦 中村達也


榊原 光石研


久喜捷三 村井國夫


会田 柄本明





予告編



2018年1月13日公開『悪と仮面のルール』予告編




公式ホームページ







感想

全編通して曇り空のような抑えたトーンに、一筋さす希望の光。
何故生きなければいけないのか、この世は生きるに値するのか、その答えを探す男に胸がつまるんだけどちょっとまったりテンポやったかな〜〜???



とりあえずキャスティングの妙。

というわけで、ちょっと難ありなところもあったのですが、それはまあおいおいやりましょう!いいところもめっちゃありました。普通に。


まずは主演。玉木宏さん。といえば僕なんか『のだめ〜』の印象が超強いのですけども。

そうそうこの指揮者の感じ。


とか、『鹿男あおによし』とかのコメディタッチな印象が強いんですよね〜。だから、こんな風にシリアスな側面の役って僕ほとんど見てなくて。その玉木宏さんがキリッとした顔して全く笑わないし、キョトンとした顔も全くない。というのは単純にいえば違和感なんですよね。

ストーリーといえば、玉木宏演じる文宏が、家系の呪縛に囚われながらも初恋の人をその呪縛からあらゆる手を使って守ってゆく、というもの。その家系というのが、”邪”の家系という設定で、ここがまた中村文則さんらしいのですが、つまりは世間を悪に染めるための使命を負っている、というもの。原作ではその起源が第二次世界大戦の凄惨な戦場ということなんですけど、まあ映画ではそこは一言触れられるくらいにまでカットされていました。まあ妥当な編成だと思います。特に不自然でもないし。


ということなんで、無表情、冷酷、とかそんな言葉が似合うような表情がおも。そんな顔してる玉木さんはやはり典型的なイケメンだった。カッコ良い。


しかし!原作読者である僕見ていて思ったのが「文宏割と感情出してね!?」でした。どういうことかというと、まあこんな邪の家系とか言われちゃうくらいなので、狙われるところもかなり手強い凶悪な奴ら。そいつらに目をつけられてボコされそうになったりすると、その恐怖や衝撃が表情にもろに出ちゃってたりするんです。


まあそこだけ見れば普通なんですけど、それをやってる玉木さんの表情が時々のだめとか鹿男とかに見えてしまい、、、


という風に、ちょっと似合わない表情が見えたりしてちょっとだけ気になりました。とは言ってもまあ概ねよかったなって感じです。とりあえずかっこいいからよし。




次!重要だった配役としては新木優子さん!


感想としては、可愛い!エロい!セクシー!肩出し!可愛い!

ということで合格点です。この役は、文宏が半ば命がけで救おうとする(そして後半にかけてはそれ以上の)役であり、となればそれだけ可愛くないと説得力がないもの。その点は大合格でしたね。めっちゃ可愛い。それでいてセクシーで、肩出しているドレスの姿ではもう「うっわ!」な感じの(語彙力ない。)艶やかさを出している。それからその何でしょうね、色気とか品格と言ってしまえばそこまでなんでしょうけど、知性というか、落ち着いたミステリアスな感じが詰まった若干ツリ目気味の大きな目が、そのキャラクターの個性と相まってすごく適役だったというイメージです。




はい次。後半では文宏と敵対する役として登場する久喜幹彦を演じたのが中村達也さん。


といえば、ハイロー信者の私としては九龍グループの家村会会長役ですよね〜このいかつい感じ。いかつさをギュッと凝縮させたような、それでいて歳を重ねた貫禄をのぞかせる感じ。


と思っていたら、以外にもクレイジーな役柄でした。己の家系、そして社会を破滅へと向かわせる己の業に自ら酔いしれているかのよう。饒舌。何をしでかすかわからない。それから残虐なんだけど、その快楽も大して顔には出さない。

そんな狂った男がいました。これまでのじっと睨みつけるようなイメージとは若干違って面白かった。




そんで、一番印象的だったのは伊藤を演じた吉沢亮。


銀魂で沖田総悟役をやったのが記憶に新しい彼なんですけども、今回は何とこんな感じ。

若干無精髭を生やして、やさぐれた感じ。ぶっきらぼうな性格のキャラクターと相まって、すごくよかったです。というか、今までの爽やか系イケメンだけじゃないんだっていう驚きですよね。あと普通に無精髭とかも似合うっていう。


この少年は、過去に両親に虐待を受け、生きていく気力を失いつつあるなかで、政府へのテロを目論むという存在。そのテロを巡って文宏と関わっていくのですが、だんだんこいつが文宏の弟みたいな存在に見えてくるんですよね。文宏が彼と同じような体験をしてきたこともあって、その生きる気力のない感情を理解できる。


という役なだけあって、彼の目は全く笑っていない。自分の過去に対してなのか、怒りさえ覚えている様子です。それでいて、この世に何かしてやりたいと思いつつテロを実行しようとしている。さらには、それでもまだ子供の一面も残っていて、文宏に対して臆したような表情をしたりと、意外と複雑でいろんな顔を見せる役柄なのですが、よく演じてらっしゃってました。見ていて楽しかったキャラクターでした。


それから柄本明さん光石研さんという安定した演技陣。こちらはもう安定しているとしか言えないところで、ほとんどスルーしちゃうんですけど、逆に言えばスルーできちゃうくらいの演技の安定さ加減ってことなんでしょう!ちっとも目立たないくらいに世界に溶け込んでいる。これはもう本当の褒め言葉なんですよ!


画面同様どんよりとしたテンポ

てなわけで、キャスティングとか演技は良かったんです!すごく入り込めたし。…なのですが…


ちょっと言いたいことといえば、特に前半の、まったりとしたテンポ。


始まりから何か引き込まれるような展開もなし、これといって衝撃的な映像もなし、かといって面白いシーンがあったりとかそういう観客が引き込まれるような仕掛けが少ない。だから設定紹介みたいな展開が続いてくるわけなんですね。


それと、これによって何が一番損なわれちゃったかって、キーワードとなるはずの”邪の家系”という設定だと思います。原作読んでいて一番衝撃的だったのは、主人公がいかに他人に無関心で、他人に冷酷に生きてきたか、または生きているか。まあそれを表すエピソードもあるっちゃあるんだけど、大して効いてないような。それというのも、絵的な衝撃度合いが少ない、あるいはセリフに現れていないというところだと思います。


または幼少期、青年期についても。ストーリー上すごく重要になってくる青年期のある事件があるのですが、そこに関するシリアスな緊張感が少なく、またそれによって現れてくるその後の主人公の言動にも若干インパクトが少ない。何より、他のキャラクターとの差別化ができておらず、何でそこまで家系が特殊と言われるのかというのがあんまり見えてこないような気がします。


まあそこは小説原作ということもあって、しかも中村文則さんは主人公の内面の主張が激しいというか、どうして何でと読めば読むほど内へ内へ下へ下へと潜り込んでいくような内容なので、それを画であるとかセリフであるとかから主張するというのはななかん難しいことなのかもしれないと思います。


ということなので、どうしても悪という要素が見えづらいという展開になってしまっているように思います。その画のタッチいうか風合いと同様に、どんよりと始まってどんよりと進んでいくという感じが否めません。それによってか、ラストシーンだけ見ればすごくいい映画なのですが、全体を通しての印象はどこかパッとしない…という感じ。


惜しい。ですが原作の大好きな要素だったのでちょっと残念でした。。。



とはいえ!曇り空に射す一筋の光に涙する。

とはいえですよ!最後のシーンは感動必至な展開。というか、このシーンのために監督はこの作品を撮ったんだろうというところでしょうか。全てのシーン、全ての演技が最後のシーンの最後の掛け合いにつながって、間違いなく響いている。


中盤で文宏は伊藤(吉沢亮演じる)との掛け合いで「この世は生きていく価値があるのか」「どうして生きていかないといけないのか」「どうして人を殺してはいけないのか」ということについて問答しています。伊藤は残虐な過去の体験から、「この世は生きている価値なんてない」という立場に立っている。


「人を殺してはいけないのはそのご自分が苦しむから。」というのが文宏ですが、「でもそれだったらすぐに自殺する前提で人を殺せばいい。そうすれば苦しんで生きていくという選択はしなくて良いんだ」というのが伊藤でした。その伊藤の問いはそのまま文宏に対しての自問自答でもある。どうして人を殺してはいけないのか。もう死んでもいいじゃないか。そう文宏は自分に問い続けながら、それでもこれまで生きてきた。


しかし、その自問自答には実は文宏なりの答えがあった。実はずっと持ち続けていた答えがあった。だからこれまで生きてこれた。そのことが初めて表面に出るシーンが、最後のあのシーンなんです。このやり取りが、どこで、どんな視線で、どういう内容のものとして、行われたのか。そこに文宏の香織に対してのスタンス、自分なりに引いた線が明確にえがかれている。それだけに、二人がその後どのような人生をたどっていくのかも見ている側には分かり易すぎるほどに見えてきます。それがどうしても切ない。


ほんで、最後の最後に文宏が言う一言。彼がこの人生に、救いのない世の中に、下した決断がその一言にしっかりと表されている。彼がこの後どんな風にして生きていくのか、と言うところも僕たちに想像させてくれる。


どんなに救いようがないように見える人生でも、救いようのない世の中でも、この世には生きていく価値がある。消えなくていい。消える必要なんてない。この世の中のどこかには、自分の幸せを願ってくれる人が必ずいる。


そんな願いのような文宏の決断が、最後に響いてきました。そんな風に僕には思えました。



最後に

あとは、幹彦がやっているビジネスというのがどうもリアルで説得力のあるものだったり、実はそこに(最初に言った『教団X』でも描かれているような、)世の中の邪悪な仕組みが垣間見えているのも印象的です。
この世は悪に包まれているのかもしれない、という背筋が寒くなるような想像を掻き立てられます。


ということで、役者さんはすごいともいかなくともなかなか印象的だった今作、全体的なテンポがもうちょい早くて引き込まれる展開だったらもうちょいすげえ作品になっていたような気が…


「めっちゃいい!!!」と思った作品はその良さを熱弁すれば良いし、「う〜わこれはないわ…」な作品だったらその悪さを酷評すれば良いので、どちらかに振り切れている作品だとすげえ描きやすいのですけども、今回のような作品って正直描きにくい。何かいたらええんやろ、、、となってしまってきついというのが正直なところ。まあひとえに僕の文章力とか見る目がないのでしょうが。


てな感じで、その強いメッセージ性に打たれようと思えば打たれる人もいる、少なくとも最後のワンシーンには何か動かされるものがあるのではないのでしょうか!?という作品でした!!!


最後まで読んでいただきありがとうございました!!!




1月13日